4. ゆう層(先進国の人々)は責任ある消費を

ミレニアム消費目標(MCGs)

ムナシンゲさんは、2001年から2008年にかけてIPCCにおいて、サステノミクスを活用し、気候変動政策を持続可能な開発戦略に統合することに取り組みました。そして、副議長であった2007年には、IPCCはこのこうけんが認められノーベル平和賞を受賞しています。
そして2010年、ムナシンゲさんは国連において、サステノミクスを基盤としてミレニアム消費目標(MCGs)のがいねんを提唱しました。これは、BIGGで示した開発の道筋をより持続可能にするために、地球資源の85%を消費している14億人、世界人口の20%の富裕層(先進国の人々)に持続可能な消費へのてんかんを求め、何十億人もの貧しい人々を助けるために資源を解放しようとするものです。富裕層(先進国の人々)の責任をついきゅうし、不平等をなくしたいというムナシンゲさんの強い思いがそこにあります。
今日の持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任 つかう責任」には、このMCGsの考え方が取りまれています。

ムナシンゲさんの今とこれから

ムナシンゲさんは現在、自らの名前をかんした「ムナシンゲ開発研究所」をきょてんに活動しています。世界銀行で実績を重ねたムナシンゲさんでしたが、責任が重くなるにつれ管理の仕事が増え、研究に費やす時間が少なくなってしまいました。このままさらに上級の職に就けば管理の仕事ばかりになり研究が全くできなくなると考えたムナシンゲさんは、2000年、定年よりも10年早く世界銀行を退職し、ムナシンゲ開発研究所を設立しました。ムナシンゲさんはいつまでも現役で持続可能な開発に係る仕事を続けたかったのです。
もうひとつ、ムナシンゲさんには先進国ではなく開発じょう国で暮らしながら問題に取り組みたいという想いがありました。だから研究所を設立する場所には開発途上国である母国のスリランカを選びました。
ムナシンゲ開発研究所は、現在は気候変動・持続可能な開発に関する研究拠点として国連に認められ、世界中のパートナーたちと共同で研究をしたり、学生たちにしょうがく金を出したりしています。

プライベートもじゅうじつしています。ムナシンゲさんは多しゅな人で、テニス、クリケット、スキー、スキューバダイビング、じゅうどうなどのスポーツ、世界各国への旅行、野外での自然や動物とのれあい、音楽、ダンスや歌、たいきょくけんめいそうなどさまざまな趣味を持ち、70代半ばとなった今でも続けています。

2015年、70歳

2015年、70歳 ガラパゴスでダイビング

2021年、76歳

2021年、76歳 元気にテニス

おくさんのスリアさんとはテニスをかいして親しくなりました。14さいのとき同じクラブでテニスをするようになり、1970年にけっこんして今年で結婚51年目。経済学修士号を持つスリアさんはムナシンゲさんの最高の理解者であり、ムナシンゲさんの成功をだれよりも喜んでいます。スリランカの女性テニスチャンピオンでもあったスリアさんとムナシンゲさんは今でも週3回はいっしょにテニスをしています。

2012年、67歳

2012年、67歳 奥さんのスリアさんとともに

むすめさんと息子さんも研究の道に進み、娘のアヌーシャさんは米国ハーバード大学で分子生物学の博士号を、息子のランジヴァさんは英国ウォーリック大学で数学の博士号を取得しています。二人ともお父さんを尊敬し、えいきょうを強く受けています。

2009年、64歳

2009年、64歳 奥さん、子どもたち、初孫とともに

若い人たちへ

私たちは多くの深刻な問題に直面していますが、ムナシンゲさんは、一人ひとりの力は無力ではない、サステノミクスの原理に従い自発的に行動すれば問題に対応できると言っています。難しいことではありません。だれかから指示をされなくても、空いているじゃぐちは閉める、部屋を出るときには電気を消す、といったことを実行すればよいのです。
ムナシンゲさんはまた「調和」をとても大切にしています。そして、地球の調和を図る前に、私たち自身が持続可能であるために必要な仕事、健康、社会とのつながりの3つの面を調和させ、自分自身が調和のとれた人間になることが重要だといいます。ムナシンゲさんも、自然に囲まれて過ごした子どものころのようなかんきょうを自ら設計して自宅の庭に再現するなど、へいおんで精神的に調和のとれた生活環境を大切にして暮らしています。調和を図るならまず自分から、をじっせんしているのです。

最後に、スリランカの古いいのりの言葉をごしょうかいしましょう。

雨が降るべき時に降りますように<環境>
実りが豊かでありますように<経済>
人々が幸福で満たされ王が公正な判断をしますように<社会>

ムナシンゲさんによれば、これはまさしく環境と経済と社会のことです。古代の人たちはすでにその大切さを知っており、私たちはそれを再発見しようとしているのです。

ムナシンゲさんは、若い人たちには新しい知識やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの技術を活用して問題を解決する力があると信じています。
みなさんは地球を取り巻く問題を解決し、この世界をより良い世界にすることができます。皆さんの将来の成功をお祈りします。」

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モハン・ムナシンゲ教授

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