3. 見えないメタンを追う

もう一つジャクソン教授が力を注いできたのが、メタンの研究です。メタンは非常に強力な温室効果ガスで、同じ重さあたりの地球温暖化へのえいきょう力は二酸化炭素よりはるかに大きいことが知られています。この影響力の指標として、GWP(地球温暖化係数) が使われます。たとえば20年という期間で比べると、メタンのGWPは二酸化炭素のおよそ90倍です。さらにメタンは、大気中での化学反応を通じて、地表付近のオゾン(光化学スモッグの原因になる気体)を増やし、健康に悪影響をあたえることがあるとされています。しかもその濃度は、近年、二酸化炭素よりもはるかに速いペースで増加しています。

メタンは、大きく分けて、自然の活動に由来するもの(自然起源)と、人間の活動によって生じるもの(じん起源)があります。自然起源の例としては、湿しっから大気中へ出てくるメタンや永久とうがとけることにともない発生するメタン、火山活動により放出されるメタンなどがあります。教授が注目している自然起源の一つは、アマゾン川流域など熱帯地域の湿地帯です。熱帯地域では、気温の上昇に伴ってメタンを生成する微生物のぞうしょくスピードが増し、活動が活発になります。その結果、メタンが大気中に出やすくなっています。これは、自然起源のメタンですが、地球温暖化が進むほど発生量が増えるため、「人間の活動が引き金になっている」と考えることもできます。

最近の推計では、このような自然起源のメタンは世界全体のはいしゅつ量の約3分の1をめます。残り3分の2は人間活動によるものです。天然ガスのさいくつちく(牛など)のゲップ、水を張ったままの水田、ごみのめ立て地、ろうきゅう化した都市ガスの配管やガス機器など、身近なところにも排出源がたくさんあります。

特にこの10年ほど、ジャクソン教授はアメリカの大都市の住宅や建物からの排出に注目し、家庭内のガス器具などから出るメタンを研究グループで調査してきました。これまで建物からのメタンろうえいは、十分にわかっていなかったからです。「自宅のガス器具に点火して、その近くにいるということは、車のはい管の前に立ってせん物質を吸いむのと同じようなものだ」と、教授は言います。

調査では、米国中の家庭のガスコンロから漏れ出したメタンの気候への影響を二酸化炭素にかんさんすると約50万台のガソリン車からの排出量に相当するそうです。

家庭のガスコンロから漏れ出したメタン

4. 大気を修復するために

menu

ロバート・B・ジャクソン教授

English