4. 幸せを測る新しい指標づくり

GDPの限界

ロバート・コスタンザ教授は、現在の経済システムが「GDP(国内総生産)」という指標に過度に依存していることにけいしょうを鳴らしています。GDPは、国や地域で一定期間に生み出された財やサービスの総額を示すもので、経済成長の指標として広く用いられています。しかし、この指標には大きな欠点があります。

まず、GDPは単に「お金で量った物やサービスの生産量」を示すだけであり、それらが社会やかんきょうに与えるえいきょうを考慮しません。そのため、犯罪こうや自然災害など、人々の生活にとってネガティブな出来事も、GDPの数字をげる要因となります。

例えば、犯罪が増えると、防犯設備のじゅようが高まり、警備会社や警備員の活動が盛んになります。これらは経済活動としてGDPに計上されますが、社会的には犯罪そのものが大きな損失をもたらしています。同様に、大規模な自然災害が発生すると、復興や再建のための経済活動が活発化し、GDPがびることがあります。しかし、災害によって失われた命やコミュニティの損失はGDPに反映されません。

こうしたけっかんのため、GDPは「人々の幸福」や「社会の持続可能性」を正確に測る指標としては不適切であり、むしろ、GDPの成長を追求し続けることが、環境破壊や社会的不平等を拡大させる原因となっているとコスタンザ教授は考えています。

新たな指標

GDPの問題を解決するための指標として、コスタンザ教授の盟友であるハーマン・デイリーさんが提唱した、「GPI(真のしんちょく指標)」があります。GPIは、経済活動の中で「人々の幸福」や「環境の健全性」を反映するように設計された指標です(詳しくはハーマン・デイリー教授のものがたりをご覧ください)。

GPIのような本当の意味で個人や社会にとっての幸福度や満足度を図るための指標を創り出し、それに対する人々の賛同を得ることがコスタンザ教授の現在の課題です。

成長に対するぞんしょうをいかにこくふくするか

コスタンザ教授は、現在の社会が経済成長をひたすらに求めている状態を「依存症」と表現しています。経済成長そのものが悪いわけではありませんが、成長をゆいいつの目標とし、それにしばられることは問題です。

個人の依存症と同様に、短期的な快楽や利益が得られると、それが将来的に大きな問題を引き起こす可能性があるとわかっていても、なかなか行動を変えられないことがあります。社会全体も同様で、経済成長の追求がかんきょうかいや不平等を助長していると認識しながら、その流れからせないでいるのです。

コスタンザ教授は、この依存症を克服するためには、まず「私たちの目指すべき未来」を明確にする必要があると述べています。人々が共有できるビジョンを作り、そのビジョンの実現に向かって行動することが重要です。

コスタンザ教授

未来へのメッセージ

コスタンザ教授は、社会全体が成長依存症からだっきゃくし、持続可能で公平な未来を目指すことを強く提唱しています。人々の人生における満足感は、生産や消費だけでなく、人間同士のコミュニケーションや様々な生態系サービスのきょうじゅにも大きく依存しています。私たちが目指すべき事は、経済成長だけを追求するのではなく、真に高い幸福度をもたらす未来へのビジョンを多くの人と共有することです。そのビジョンが多くの人々に支持されれば、政府やぎょうにも大きな影響を及ぼし、社会を望ましい方向へ進める原動力となるでしょう。まずは、みなさんの身近な人たちと、どのような社会にしていきたいかを話し合い、社会を動かすための声をあげていきましょう。

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ロバート・コスタンザ教授

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