学習の手引き

IPBESのものがたりはいかがでしたか?
ここは、みなさんがものがたりについて復習したり、理解を深めたりするためのページです。
ここだけに書いてあることもありますよ!

<対象:10さい以上>


まずはクイズです!

問1:重大な環境問題である気候変動と生物多様性の損失について、IPBES設立前の状況として最も実態に近いものはどれでしょう。

1. 気候変動は生物多様性の損失ほど注目されていなかった。

2. 生物多様性の損失は気候変動ほど注目されていなかった。

3. 気候変動と生物多様性の損失は同様に注目されていた。


こたえ

問1:世界で起こる自然災害のうちもっとも多いのは次のうちどれでしょう?

こたえ:2. 生物多様性の損失は気候変動ほど注目されていなかった。

生物多様性の損失は重大な環境問題であるにもかかわらず、長い間、気候変動ほどは注目されていませんでした。2012年に設立されたIPBESは、生物多様性の損失を、気候変動と同等の緊急性と優先度を持つ問題として位置づけました。

問2:「自然が人間にもたらすもの(NCP)」は何を指しているでしょうか。

こたえ:3. 自然が人間にもたらす良い影響と悪い影響の両方

「自然が人間にもたらすもの(NCP)」は、人間が自然から受ける恩恵を指す「生態系サービス」と似ています。しかし、NCPには食料供給や水の浄化などの良い影響だけでなく、病気の伝播や捕食などの悪い影響も含まれている点が異なります。


ここはおさえておこう

人間活動の拡大のために、生物多様性の損失が急速に進み、危機的状況をむかえている。

IPBESの活動により、生物多様性損失の問題への取り組みは、気候変動と同様に注目されるようになった。


もっとくわしく

自然が人間にもたらすもの(NCP)と生態系サービス

本文でしょうかいした通り、IPBESの報告書に登場する「自然が人間にもたらすもの(NCP)」とは、人間が自然から受けるすべての関わりのことで、ポジティブな側面だけでなくネガティブな側面も含まれます。NCPは「自然の寄与」と訳されることもあります。一方、ミレニアム生態系評価で提唱された「生態系サービス」は、人間が自然から受ける様々な恩恵を指すもので、いっぱんにも広くきゅうしたがいねんとなっています。
以下の表の通り、NCPと生態系サービスはおおむね対応しており、基本的にはよく似た概念です。

No. 自然が人間にもたらすもの(NCP) 生態系サービス
分類 カテゴリ 分類 カテゴリ
1 自然の調節的な寄与 生息地の形成・維持 基盤/生息・生息地サービス 生態系の維持
2 送粉・種子等の散布 調整サービス 花粉媒介
3 大気質の調整 大気調整
4 気候の調整 気候調整
5 海洋酸性化の調整
6 たんすいの量、場所、タイミングの調整 水量調節
7 淡水・沿岸域の水質の調整 水質浄化
8 土壌・たいせきぶつの形成・保護・浄化 地力(土壌よく)の維持(土壌形成をふくむ)、土壌浸食の抑制
9 災害・きょくたんな気象現象の調整 局所災害の緩和、土壌浸食の抑制
10 有害生物・生物プロセスの調整 生物学的防除
11 自然による物質的な寄与 エネルギー 供給サービス 原材料
12 食料と飼料 食料、淡水資源、原材料
13 原材料、ペット、労働力 原材料、かんしょう資源
14 医薬品・生化学及び遺伝資源 遺伝子資源、薬用資源
15 自然による非物質的な寄与 学習・インスピレーション 文化的サービス 自然景観の保全、
レクリエーションや観光の場と機会、
文化、芸術、デザインへのインスピレーション、
神秘的体験、
科学や教育に関する知識
16 身体・心理的体験
17 アイデンティティの形成
18 将来の選択肢の維持※ 基盤/生息・生息地サービス 遺伝的多様性の維持(特に遺伝子プールの保護)

※「選択肢の維持」(NCP18)は、自然が提供するせんざい的な機会の多様な側面を伝えるもので、3つのNCPグループすべてにまたがる。

環境省『生態系サービスと「自然がもたらすもの(NCP)」』を元に旭硝子財団作成

NCPと生態系サービスのちがいとしては、NCPは良い影響だけでなく悪い影響も考慮していること、文化的背景に基づく観点や多様な世界観を重視していることなどがあげられます。IPBESは科学的知見だけでなく、先住民・地域の知識を含む複数の知識体系に基づき、生物多様性や自然が人間にもたらすもの(NCP)を評価し、政策立案や意思決定、行動のための根拠を提供しています。

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生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)

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