3. 100万種がぜつめつの危機に!?

地球規模評価報告書

IPBESは、2012年の設立から2024年12月までに、13件の評価報告書を発表しています。最初に発表された2016年の『花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関する評価報告書』では、ミツバチやちょうなどの花粉を運ぶ動物が世界中で減少している状況を明らかにし、食料の安全保障に対して深刻なきょうとなっていることを警告しました。

そして、さらに強いインパクトをもたらしたのが、2019年に発表された『生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書』です。

この報告書は、「自然が人間にもたらすもの(NCP)」が世界的にれっしていること、とくに人類が自然に依存する作物の受粉、気候変動のかんなどの調整機能が、過去50年で悪化していることを明らかにしました。また、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する国際目標を達成するためには、経済・社会・政治・科学技術などのあらゆる分野にわたる横断的な社会変革(transformative change)が必要であることを示しました。

しょうちょう的な発見は、地球上の推定810万種の動植物のうち約100万種が絶滅の危機にひんしているということでした。これは、地球上の全動植物の8分の1ほどにもあたる種が、絶滅の危機に瀕していることを意味しています。

IPBESの各種評価報告書

IPBESの各種評価報告書

地球規模評価報告書(2019)

地球規模評価報告書(2019)

報告書のえいきょう

「この数字は生物多様性の危機を象徴するものとして、世界中で広まりました。今でも、人々が生物多様性の損失について語る時、必ずと言って良いほど引用される数字です。」と、IPBESの事務局長、アン・ラリゴーデリー博士は述べています。100万種がぜつめつの危機にあるという発見は世界中のメディアで大きく取り上げられました。発表後わずか1週間で、160カ国以上で報道され、55カ国語で3万3000をえる記事がけいさいされました。

報告書の公表直後にかいさいされた世界経済フォーラム(WEF)(つうしょうダボス会議)の年次総会では、生物多様性の損失の問題が初めて「世界のビジネスにとって最もきんきゅう性の高いリスク」のトップ5に挙げられました。それ以来、この問題は毎年、ビジネスリスク要因のトップ5にふくまれ続けています。

そして、この地球規模評価報告書の内容などをふまえ、2022年にカナダのモントリオールで開かれた第15回国連生物多様性条約ていやく国会議(CBD-COP15)では、「30by30目標」(2030年までに世界の陸と海の30%を保全する計画)などを盛りんだ「こんめい・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。これにより、2030年までに"生物多様性の損失を止め、反転させ、回復どうに乗せるための緊急な行動をとる"といったミッションがかかげられました。

こうしてIPBESは生物多様性の問題を、気候変動と同様の緊急性と優先度を持つ課題として位置づけたのです。IPBESとIPCCがきょうさいした2021年のワークショップ「生物多様性と気候変動」では、両方の危機を同時に解決しなければ、いずれの問題にも効果的に対処できないと結論づけられました。

例えば、森林管理を最適化することで、二酸化炭素の吸収・貯蔵を増加させ、気候変動のかんに貢献すると同時に、森林の生態系を保護し、生物多様性の維持にもつながるというように、気候変動と生物多様性の両方に有益な解決策が求められるようになっています。

IPBESについて

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4. 自然と人間は繋がっている

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生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)

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