1. 気候変動は重要、でも生物多様性は?

生物多様性の損失とは

人類は生物多様性のもたらす自然のめぐみによって発展してきました。しかしその反面、人間活動の拡大が原因となり、生物多様性が急速に失われつつあります。生物種のぜつめつスピードは加速しており、漁業資源の減少やミツバチなどの減少が食料生産などの面で、私たちの生活に直接的なえいきょうおよぼすなど、生物多様性の損失の影響は年々拡大しています。

地球サミット

このように生物多様性の損失は重大な問題であるにも関わらず、長い間、気候変動の問題ほどは注目されていませんでした。

1992年の地球サミットにおいて国連気候変動わくぐみ条約(United Nations Framework Convention on Climate Change:UNFCCC)と、生物多様性条約(Convention on Biological Diversity:CBD)さいたくされ、気候変動と生物多様性、それぞれの問題対策の基盤が築かれました。しかし、国連気候変動枠組条約は、地球サミットに先立って1988年に設立されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)から科学的支援を最初から受けることができたのに対し、生物多様性条約には同様な支援の仕組みがありませんでした。

ミレニアム生態系評価

変化のきっかけとなったのは、2005年に発表されたミレニアム生態系評価の報告書です。この評価は、世界中から集められたぼうだいなエビデンスに基づき、地球規模の生態系に関する初の大規模なかんきょう評価としてじっされました。この報告書では、例えば、ミツバチ、チョウ、鳥、コウモリといった花粉をばいかいする生き物の減少が農作物に及ぼす悪影響や、じょうしんしょくを防いだり水を供給したりする上で自然や生物が果たす重要な役割などが取り上げられました。それ以前は、生物多様性の保全とは主に「パンダを保護する」といった、どこか遠いところで一部の特別な動物を守るための活動、といった観点でとらえられていましたが、ミレニアム生態系評価によって、多くの人々が生物多様性と人間が密接に結びついていることを理解するようになったのです。

しかし、ミレニアム生態系評価は単発的なものであり、当時はこのような評価をけいぞく的に実施する仕組みはありませんでした。

そこで、「気候変動に関する最新の科学的知見について評価しているIPCCのように、生物多様性についても継続的に知見を評価する仕組みを立ち上げる必要がある」という機運が高まったのです。そして約7年間にわたる国際的な協議を経て、2012年にIPBESが設立されました。地球サミットから20年が経過していました。

2. 科学的支援のしくみ

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生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)

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