かんしゅうのことば

-2022年(第31回)ブループラネット賞受賞者にせて-

2022年(第31回)のブループラネット賞は、次の2名の方が受賞されました。

ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下
スティーブン・カーペンター教授(米)

それぞれの業績について、監修者として記述をしてみたいと思います。


1. ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下の業績

もっとも重要なことは、受賞者がブータンというの国の国王陛下であることだと思います。

みなさんはブータンという国に行かれたことがありますか。まあ、行かれた方は、かなり特異な方だと思います。監修者は、かなり前のことになりますが、ブータンという国にかれて、我々の研究室にいたインドの学生に道案内をたのんで、行って見たことがあるのです。

その結果分かったことは、ブータン王国がもっとも重要視していることが、「国民の総合的な幸福度(英語:Gross National Happiness)」であって、経済的な豊かさだけが幸福度を決めるものではないという事が真理であるという結論にとうたつしていることでした。

かなりてつがく的な結論ではありますし、日本のようにちゅうはん以上に経済的に豊かな国の国民が、この発想を持つのはかなり難しいと思われる思想だと言えると思います。

実際、行って見た最大感想は、なんと静かな空気が流れている国なのだろう、というものでした。東京のように、所得がかなりのレベルである場所とはちがって、自動車のそうおんはありません。人々は、ゆったりとした目をしていて、何かに追いめられているという人々は存在していないかんしょくでした。別の表現をすれば、幸福そうに見える人々が大部分だったということです。その時気付いたことが、「所得だけが幸福度を決める訳ではない」、という真理があるに違いないということでした。

逆に言えば、平均所得を高めようとすれば、どうしても利便性の高さを追求せざるを得ないので、かんきょうをある程度悪い方向に変化させてしまうような機材を、その最大の例が、自家用車で、どうしてもある程度導入しなければならない、ということでした。


2. スティーブン・カーペンター教授の業績

米国ウィスコンシン大学陸水学センターめい所長・名誉教授であるカーペンター教授がもう一名の受賞者でした。その業績は、湖の生態系の研究、特に、リンやちっなどの栄養塩類による富栄養化を研究し、湖の持続性をどのようにモデル化できるかという環境問題について、人間の行動を地球科学的視点から見直すという重要なたんしょを作ったこと。人間の経済活動が引き起こす危機をてきしたと言うことも出来るのではないか、と思われる業績でした。

実際のところ、水という物質の環境影響は非常に重要だと思います。日本における河川のじょうきょうを見ると、例えば、筆者の自宅の近く(徒歩10分)にある目黒川は、都市河川だけのことはあって、数10年前にはなんともみょうしゅうを発していたのですが、このところ様々な鳥が集まるようにもなっていて、時には、白鳥も来るというレベルまで水質が改善されました。カーペンター教授の言葉で言えば、「生態系を修復し守る」ことが、日本においても極つうになったのだと思います。進化したものです。教授のおかげということができるでしょう。


やす いたる Itaru Yasui
国際連合大学元副学長
東京大学めい教授


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