4. 新たな活動

ハイランド・リワイルディング社

現在、レゲット博士が新たに力を入れているのが、スコットランドのハイランド地方の自然を「再野生化(リワイルディング)」して元の豊かな姿にもどす活動です。この活動を進めているのが、レゲット博士が創業したハイランド・リワイルディング社です。

2020年、博士が以前に設立した太陽光発電の会社ソーラーセンチュリー社は、ノルウェー政府が持つ再生可能エネルギーぎょうに買収されました。その際にまとまった資金を得ることができたため、レゲット博士は、長年温めてきた新たな構想に着手したのです。

レゲット博士は、大気中の二酸化炭素を減らすには、グリーンエネルギーだけでは不十分だと考えていました。そこで目を向けたのが、自然そのものを回復させることでした。これにより、気候変動の問題と生物多様性のそうしつの問題を、同時に解決できるはずだと考えたのです。

自然をよみがえらせる活動と地域の人々

ハイランド・リワイルディング社での活動は、ずっと続けていくために、ビジネスとして行われています。たとえば、自然回復の成果を評価するためのデータかいせきを専門的なサービスとして提供したり、再野生化された土地でエコツーリズムを行ったりしています。レゲット博士は、森などが二酸化炭素を吸収する価値や、生き物が増える価値を正しく評価し、その効果を長く保ち、目に見える形で示すことが大切だと言います。

またレゲット博士は、自然の回復を成功させるには、その土地に住む人たちとの協力が不可欠だとも考えています。ハイランド・リワイルディング社が活動しているスコットランド西海岸のタイヴァリック地域では、地元の人たちがチームを作り、レゲット博士たちと話し合いながらプロジェクトを進めています。

具体的な取り組みの一つが、温帯雨林の再生です。昔はスコットランド西部全域に温帯雨林が広がっていましたが、今ではごく一部しか残っていません。森をよみがえらせることで、二酸化炭素を吸収する力を取りもどし、たくさんの生き物が暮らせるかんきょうを作ろうとしています。

バンロイト

タイヴァリック半島

ハイランド・リワイルディング社がスコットランドで管理する土地
(左:バンロイト、右:タイヴァリック半島)

レゲット博士はハイランド・リワイルディング社でも、ソーラーセンチュリー社と同じように「小さく始めて大きく育てる」ことを目標にしています。ハイランド・リワイルディング社が利益を生み出せるようになるのは、まだこれからです。けれども、「自然を回復させるという新しい分野を、安心して投資できるしんらいあるビジネスとして育てたい、人々が長く安心して暮らせる未来を作りたい」と博士は考えています。レゲット博士はこの仕事が楽しくてしかたがないそうです。

レゲット博士の現在

自らを仕事中毒だとしょうするレゲット博士。しゅの時間をあまりとれないそうですが、時間ができると、スコットランドの自然の中を散歩するのを楽しんでいます。現在は日本人の妻アキさんと、ネス湖が見えるスコットランドのインヴァネスきんこうで暮らしています。

アキさんはインヴァネスこうきょう楽団の首席フルート奏者としてかつやくしています。以前は国連環境計画(UNEP)で働いていた経験もあり、レゲット博士の仕事のよき理解者でもあります。アキさんによると、レゲット博士はとても前向きで、困難があっても解決策を見つけて進んでいくところが素晴らしいと思うそうです。一方で、うっかりした一面もあり、空港のラウンジで仕事に集中しすぎて、飛行機に乗りおくれたことが何度もあるのだとか。けれどアキさんは、それも目標に強く集中できるレゲット博士の強みだと考えています。

アキさんと、ホイペット犬の「ショー」とともに

アキさんと、ホイペット犬の「ショー」とともに

社会が目指すべき道

レゲット博士は、経済のあり方を見直す必要があると言います。これまでの経済成長には、地球をこわしかねない活動もふくまれていました。それをそのまま「よい成長」と考えるのは問題だ、というのです。私たちは、経済はずっと成長し続けるものだと考えがちです。けれども、もし地球の気候が取り返しのつかないことになれば、これまでに築いてきた豊かさは、あっという間に失われてしまいます。

だからこそ社会が目指すべきなのは、気候変動に立ち向かう力を育てることです。グリーンエネルギーを使うこと、温室効果ガスを減らすことなど、新しい形での豊かさを作る仕組みが必要になります。これまでのような経済成長を目指すやり方とはちがうかもしれません。しかし、地球の環境と人の暮らしの両方を守りながら、「本当の豊かさ」を生み出す取り組みは、必ず社会の中で広がっていく。レゲット博士はそう考えています。

レゲット博士からのメッセージ

各国政府へ

「約束したことを実行してください」

世界中の多くの国の政府は、気候変動に関するパリ協定や、昆明・モントリオール生物多様性わくぐみに署名しました。今、各国政府がすべきことは、約束を守るために必要な政策を実行することです。しかし現状では、十分に進んでいません。

企業へ

「目先の利益だけで考えるのをやめてください」

もし、科学者たちが警告するきょうが正しいなら、いま、企業が行動しなければ将来、ビジネスそのものが続けられなくなるおそれがあります。つまり、行動することはビジネスにとっても利益にかなっているのです。それでも、そのことを本当に理解し、行動に移す企業はまだ多くありません。

私たち一人ひとりへ

「できるはんで、できることをしてください」

仕事や家族のことでいそがしく、時間があまりとれないかもしれません。それでも、できることをやればいいのです。多くの人が行動することで、社会が変わっていくことを願っています。そうした変化が、人類が存続し続けられる未来につながるはずです。

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ジェレミー・レゲット博士

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