2. グリーンエネルギーの先駆け

環かん境きょう保護活動の開始

王立鉱山学校を辞めたあと、レゲット博士は、グリーンピースで活動を始めました。グリーンピースは急進的な環境保護団体です。保守的な大学に属していたレゲット博士にとっては大きな方向転てん換かんでした。

最初の1年間は、野生動物の保護、有害物質、原子力、気候変動などさまざまな課題に関わりました。その後、気候変動の問題に特に力を入れたいと考えた博士は、気候変動に関する科学者チームの責任者として、グリーンピースの各国の事務所と連れん携けいしながら活動するようになります。

シベリアの油田にて、イヌイットのリーダーとともに

シベリアの油田にて、
イヌイットのリーダーとともに

この時期に、優秀なリーダーやマネージャーたちと一いっ緒しょに仕事をしたことで、レゲット博士は後に起業家になるために必要な能力を身につけることができました。この経験をレゲット博士自身もとても幸運だったと振り返っているそうです。レゲット博士は多くのビジネス関係者から「気候変動対策を進めるなら理念を掲かかげるだけでなく、会社を作ってビジネスの世界で行動してはどうか。」と勧すすめられました。

そこで、まずレゲット博士はグリーンピースの仕事を1年間休み、オックスフォード大学に戻もどって気候変動と保険業界の関係を研究し、本を書きました。たとえば気候変動によって自然災害が増えれば、保険会社が支し払はらう保険金も増え、経営への負担が大きくなります。レゲット博士の目的は、保険業界に気候変動のリスクを真しん剣けんに考えてもらい、気候変動を止めるための行動につなげてもらうことでした。また当時、石油やガスの業界は自分たちの既き得とく権益に固こ執しつして気候変動対策に消極的でした。だからこそ博士は、保険業界が声を上げることで、石油やガスの業界に変化を促うながしてほしいと考えたのです。

太陽光発電への挑戦

グリーンピースやオックスフォード大学での経験を生かし、1997年、レゲット博士はソーラーセンチュリーという太陽光発電の会社を設立しました。当初は、気候変動を懸け念ねんする投とう資し家と太陽光発電をつなぐための団体という構想のもとに設立しましたが、その後、太陽光発電システムを販はん売ばい・設置する会社へと成長していきます。

ソーラーセンチュリーの仲間たち

ソーラーセンチュリーの仲間たち

ソーラーセンチュリーの仲間たち

会社が利益を出せるようになるまでには約6年かかりました。その間には、多くの苦労がありました。最大の壁かべは、石油や石炭を扱あつかう大手エネルギー会社との対立でした。彼かれらは「太陽光が、石油や石炭と競合するような安いエネルギーになったら考えを変える」と言っていましたが、実際に太陽光発電が広まっても態度を変えようとしませんでした。

もう一つの大きな壁は、資金を集めることでした。当時は太陽光発電事業がまだ始まったばかりだったので、銀行や投資家を説得して出資してもらうのがとても難しかったといいます。

それでも困難を乗り越こえられたのは、優秀で熱心な仲間に恵めぐまれたからでした。さらに2007年から2008年に起きた世界的な金きん融ゆう危機(リーマンショック)では、多くの企き業ぎょうが倒とう産さんする中、乗り切れるだけの資金を持っていたことも大きな助けとなりました。こうしてソーラーセンチュリー社は成長し、ついにはイギリス最大級の太陽光エネルギー会社になりました。

ソーラーセンチュリーのチームミーティングにて

ソーラーセンチュリーのチームミーティングにて

グリーンエネルギーが未来を変える

レゲット博士は今も昔も、太陽光などのグリーンエネルギーこそが、気候変動の問題を解決するカギだと考えています。特に太陽光発電は、一度設置すれば燃料を足す必要もなく、とても便利な技術です。レゲット博士はずっと、太陽光が将来の世界のエネルギーにとって重要な存在になると信じてきました。そして、その考えは今、現実になりつつあります。かつては「太陽光は原子力、石炭、ディーゼル、ガスにはかなわない」と言っていた専門家が今では太陽光をほめていたりして、レゲット博士は心の中で、「あの時はそんなこと言っていなかったのに……」と思うそうです。

ソーラーセンチュリー社の重要な活動のひとつに、アフリカでソーラーランタンを広めるプログラムがあります。この活動は、会社が作った慈じ善ぜん団体「ソーラーエイド」によって行われました。会社の利益の5%をソーラーエイドに寄付し、地元の人たちがソーラーランタンを販売するのを支援しました。その結果、長く続けられる仕事と収入の仕組みが生まれました。

この取り組みは社会の役に立っただけでなく、社員のやる気を高め、会社にも大きな成果をもたらしました。活動はまずケニアとタンザニアで始まり、その後マラウイやザンビアにも拡大していきました。

レゲット博士は、アフリカを訪れたときに見た、以前は灯油も買えず暗い中で暮らしていた人たちが夜にソーラーランタンの明るい光の中で過ごしていた姿が忘れられないそうです。

マラウイの学校でソーラーランタンを説明

マラウイの学校でソーラーランタンを説明

3. 化石燃料は持っていると損する!?

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ジェレミー・レゲット博士

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