学習の手引き
デバラティ・グハ=サピール教授のものがたりはいかがでしたか?
ここは、みなさんがものがたりについて復習したり、理解を深めたりするためのページです。
ここだけに書いてあることもありますよ!
<対象:小学校高学年以上>
まずはクイズです!
問1:世界で起こる自然災害のうちもっとも多いのは次のうちどれでしょう?
問2:グハ=サピールさんが大規模災害の対策のために作り上げたものはなんでしょう?
こたえ
問1:世界で起こる自然災害のうちもっとも多いのは次のうちどれでしょう?
こたえ:2. 洪水
グハ=サピールさんによれば、世界で起こる自然災害のほぼ半数、全災害の43%が洪水、その次が約30%の暴風で、自然災害全体の約70%が洪水と暴風で占められています。その次は地震が8%、そして熱波や寒波などの異常気温が6%(ただしもっと多い可能性あり)、地滑りや干ばつが5%となっています。そして、2023年現在、直近の8年間の全災害のうち約90%が気候関連災害です。世界全体で見た時に、こうした気候関連災害が地震や火山噴火などの災害よりも圧倒的に多くなっていること、そして各災害の深刻さが明らかに増していることをEM-DATのデータは示しており、それらの災害は気候変動、つまり地球温暖化に起因するものであるとグハ=サピールさんは考えています。
問2:グハ=サピールさんが大規模災害の対策のために作り上げたものはなんでしょう?
こたえ:1. 大規模災害に関するデータベース
グハ=サピールさんが作成したEM-DAT(Emergency Events Database)は、世界中の大規模災害に関する初のデータベースです。災害時の人道的行動を支援すること、災害対策を講じるために信頼性の高いデータを提供することを目的としており、多くの国際機関、各国政府などが気候災害などの防災・減災に取組むにあたり、科学的な基礎データとしてなくてはならないものとなっています。
ここはおさえておこう
近年、災害全体に占める気候関連災害の割合が急増しており、その原因として気候変動による影響が懸念されている。
世界中の大規模災害に関するデータベース「EM-DAT」は、防災、減災に携わる多くの人々に活用されている。
もっとくわしく
マイクロスタディ(詳細研究)
グハ=サピールさん達は、災害に関するより細かな調査として、マイクロスタディ(詳細研究)を行っています。災害で亡くなった方々について細かく調べることでその地域で何に気を付けるべきかを特定し、同じような悲劇が再び起きないようにするための研究です。
例えば、2021年、ベルギーで起こった洪水で38人が死亡しました。被害者の多くは男性で、特に高齢ではなく、一部には障がいを持つ人も含まれていました。また、生活費は安いものの洪水のリスクの高い地域に住んでいました。ここからは、こうした地域の住宅政策を見直さなければならないことや、障がいを持つ人々の高いリスクを考慮する必要があることがわかります。
また、イタリアのナポリで起きた地震の例では、犠牲者のほとんどが若い男性でした。一般的には機敏で抵抗力も高く、通常では最も死亡率が低い層である若い男性ばかりがなぜ亡くなったのでしょうか。調べてみると、地震が起こった地区には大学の寮があり、犠牲者のほとんどが一人暮らしをしていました。地震後に救出された多くの人は、家族や近所の人に助けてもらっていました。救助隊の到着は遅れてしまうことが多いからです。この例から、一人暮らしも災害時の死亡リスクを高くする要因となり得ることがわかりました。
グハ=サピールさんは、こうした詳細な情報が、リスクの軽減や災害対策に活かされることを期待しています。