2. 正しいデータの大切さ

ベルギーの災害えきがく研究センターにて

アンドレさんと出会った頃

アンドレさんと出会った頃

結婚式

結婚式

グハ=サピールさんは、大学院時代に博士課程の学生だったアンドレさんと出会い、1977年にけっこんしました。

その後、ウィスコンシン州マディソンで州政府機関の職員として白血病のプロジェクトに参加しました。そうして5年ほど暮らしたのち、アンドレさんの故郷、ベルギーのブリュッセルに移住し、そこから新しい研究人生が始まりました。

ブリュッセルで暮らし始めた当初のグハ=サピールさんは、言葉のかべや文化のちがいなどの困難に直面し、知り合いもおらず仕事もなくて大変だったそうです。それでもやがてルーヴァン・カトリック大学で働くことになり、そこで出会ったのが、グハ=サピールさんがしょうがいの師とあおぐミシェル・ルシャ教授でした。

初めて会った時、ルシャ教授は彼女に二つのせんたくを示してくれました。ひとつは、給料はよいけれど内容は単純なデータ入力の仕事、もうひとつは予算が少ないプロジェクトで給料は低いけれど、貧困国の栄養不足問題を研究する仕事でした。

ブリュッセルに移った頃

ブリュッセルに移った頃

グハ=サピールさんは迷わず後者をせんたくし、自らのキャリアを貧困国の問題解決にささげる決心を固めました。そして、ルシャ教授の元、ブリュッセルにある災害疫学研究センター(Centre for Research on the Epidemiology of Disasters: CRED)で災害データの収集とぶんせき・研究を行うようになりました。

ミシェル・ルシャ教授と

ミシェル・ルシャ教授と

科学に使う言葉とは

1985年、アフリカのチャドでのと干ばつを調査する大きなプロジェクトに参加したグハ=サピールさんは、実際にチャドに行って目にした状況に大きなしょうげきを受けました。何千人もの人たちが深刻なきんによる極度の栄養けつぼう状態にあり、子どもたちはまるで棒のようで、口の周りはかんそうで真っ白になっていたのです。

グハ=サピールさんは3か月半かけてデータを収集し、帰国しました。そして、ルシャ教授にこの状況を報告しました。するとルシャ教授は、栄養不良の人たちの割合や亡くなった人たちの割合はどれくらいかとたずねました。グハ=サピールさんは「たくさんの人たちが亡くなっています。」と答えました。すると、ルシャ教授は言いました。「たくさんというのは科学に使う言葉ではない。人口何人のうち死者数は何人なのか。具体的な数字がともなわなければ意味がない。」

この経験からグハ=サピールさんは、災害に対処するには正確なデータが不可欠であることを痛感しました。例えば、が起こった直後は亡くなる人が増え死亡率が急激に上がりますが、ある時点でピークをえると生き残った人が病院で治療を受けるようになるので死亡率は下がります。ですから、もしピークを越えてから現地で調査をしたとしたら、亡くなる人は少ないので、状況はそれほど悪くないという結論になってしまうでしょう。そのような誤解をしないためには、もっと前の時点の死亡率と比較する必要があります。

このように、正しい分析をするには正しいデータを持っていることが重要なのです。そしてデータは、地域全体の人口や現場の状況など、他の要素と組み合わせてはじめて意味を持ち、対策を考えたりするための有用な情報となります。

そこで、グハ=サピールさんは、そうしたデータを集め、比較できるシステムを作ろうと思ったのです。

3. 災害データベース「EM-DAT」

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デバラティ・グハ=サピール教授

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