科学に使う言葉とは
1985年、アフリカのチャドでの飢餓と干ばつを調査する大きなプロジェクトに参加したグハ=サピールさんは、実際にチャドに行って目にした状況に大きな衝撃を受けました。何千人もの人たちが深刻な飢饉による極度の栄養欠乏状態にあり、子どもたちはまるで棒のようで、口の周りは乾燥で真っ白になっていたのです。
グハ=サピールさんは3か月半かけてデータを収集し、帰国しました。そして、ルシャ教授にこの状況を報告しました。するとルシャ教授は、栄養不良の人たちの割合や亡くなった人たちの割合はどれくらいかと尋ねました。グハ=サピールさんは「たくさんの人たちが亡くなっています。」と答えました。すると、ルシャ教授は言いました。「たくさんというのは科学に使う言葉ではない。人口何人のうち死者数は何人なのか。具体的な数字が伴わなければ意味がない。」