もちろんブラックカーボンは石炭の燃焼や焚火などディーゼル車以外からも排出されるので、これはあくまでも単純化した例ですが、世界中でメタン、オゾン、ハイドロフルオロカーボン、ブラックカーボンの排出を削減できれば、実際に地球温暖化のスピードを大幅に緩めることができるのです。
ラマナサンさんはこの4つの物質を、大気中に留まる時間が短いという特徴から短寿命気候汚染物質(SLCPs)と名付け、これらを削減することが地球温暖化を遅らせることに極めて有効であること、そして作物や人間への被害をもたらす大気汚染も減らすことができることを何人もの研究者とともに発表しました。すると2010年、ラマナサンさんの元に国連から、短寿命気候汚染物質の研究グループのリーダーになって欲しいという連絡が入ります。彼は申し出を受けましたが、外部の別の科学者に報告書作成を統括するよう依頼し、自身は副議長を務めました。そして他の研究者と連名で国連の下で報告書を発表し、それに基づき2012年に短寿命気候汚染物質の削減を目的とした、「気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)」を設立しました。