2. もう一つの物質

地球温暖化ってどんなもの?

ところで、みなさんは温室効果・地球温暖化とはどのようなものか知っていますか。例えばあなたが今日車を運転するとします。そこからはいしゅつされた二酸化炭素の半分はおよそ100年間大気中に残ります。そうして残った二酸化炭素は風によって地球の大気全体に広がり、地球全体を毛布のようにおおいます。そうすると何が起こるのでしょうか。
地球にとっての主なエネルギーは太陽光です。太陽光によって大気や地表、海面が温められます。その時、何も覆いがなければ、冬に布団なしでるのと同じように熱は放出され寒くなります。逆に毛布があれば熱を閉じめて暖かくなります。大気中の二酸化炭素やその他のガスが毛布のように地球を覆うことで熱を閉じ込めると、大気が温室の中のようにあたたかくなるので、この効果を温室効果と呼びます。

温室効果ガスがなければ地球は寒すぎて私たちが住めないかんきょうになってしまいます。しかし、一方で毛布を5枚もかけてはねむることができないように、温室効果ガスも多すぎれば地球を温めすぎてしまいます。自然のままの地球には、二酸化炭素や水蒸気、オゾンや雲などがぜつみょうなバランスで存在していて、熱を閉じこめ過ぎず、がしすぎず、うまくつり合いを取っていました。しかし人類は、温室効果ガスやせん物質を大量に排出し続け、本来は逃げて行くべき熱までも閉じめてしまっています。このようにして、地球が温まっていくことを地球温暖化といいます。

重大な発見

さて、ラマナサンさんのお話にもどりましょう。博士課程をしゅうりょうした後、ラマナサンさんは宇宙の研究で有名なNASAで働くことになりました。NASAでせいそうけんオゾンの破壊が地球の気候にあたえるえいきょうについて研究していたころかれはクロロフルオロカーボン類(CFCs)がオゾン層をかいしているという論文を読みCFC類に興味を持ち、すぐに独自に調べ始めました。冷蔵機器製造会社で働いていた頃に機器からのれになやまされ続けていた、あのれいばいとして使われるCFC類の研究をすることになったのです。
 昼間にNASAの仕事をしながら、夜は自宅でリサーチと計算を重ねること約1か月、CFC類には別の非常に大きな問題があることに気づきます。そしてラマナサンさんはその仮説を3か月間何度もり返し検証し、1975年、ついにCFC類は二酸化炭素よりも1万倍も温暖化への影響が大きいことを発見したのです。

この画期的な発見は、彼の仕事と家庭に大きな助けをもたらしました。インドから来た無名の研究者を気候・大気科学分野の主流に導き、移民であっても自分のやりたい研究をすることができる機会をもたらしたのです。そして、もしかしたら昼も夜も研究に明け暮れている彼のことをおくさんは不満に思っていたかもしれませんが、その奥さんにようやく自分はゆうしゅうな研究者であると示すこともできました。同時にこの出来事は、温室効果ガスというやっかいな問題を世界に示すことにもなりました。

1978年、34歳

1978年、34さい

その後の数年間でラマナサンさんや世界中の研究者によって、温室効果のあるりょうガスが発見されました。そしてそれらの微量ガスの研究は、気候-化学そう作用と呼ばれる気候関連の研究分野をほうかつする新たな研究領域の創出にこうけんしました。NASAと国連は、ラマナサンさんのCFC類に関する発見の重要性を認識し、1983年に国際的な科学者グループを招集し、彼にこの委員会の議長を任せました。ラマナサンさんのとうかつの下、この研究グループによって発表された報告により、1980年代の時点で、二酸化炭素以外の温室効果ガス類は、二酸化炭素と同程度に地球温暖化に影響していると結論づけられました。

3. 短寿じゅみょう気候せん物質

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ヴィーラバドラン・ラマナサン教授

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