4. 私たちが目指すべき未来の文明

歴史から学べること

今日の私たちの文明は、『文明ほうかい』でしょうかいされていた過去の文明と同じように、森林かい、気候変動、水問題など、ますます深刻化するさまざまなかんきょう問題をかかえています。私たちがかつてほろんだ文明と同じ道をたどらないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。

ジャレド・ダイアモンド教授

ダイアモンドさんは、未来に向けてなすべきことが2つあるといいます。ひとつは、持続可能な世界を目指すことです。かつて環境問題にうまく対応し、生き延びてきた文明が行ってきたように、資源を取りつくさないように、資源が生産される速さ以下で資源を消費するようにする必要があります。適切に管理すれば、森林や漁場などは持続可能な資源ですし、金属もリサイクルできます。ただし、石油や石炭などの化石燃料は再生できないので、今後は多くのエネルギーを太陽光や風力などの再生可能な資源から得るようにすべきだとダイアモンドさんはいいます。

もうひとつは、環境問題に優先順位をつけないで全てに同時に取り組むことです。ダイアモンドさんは『文明崩壊』の中で、資源のかつや気候変動などの深刻な12の環境問題(学習の手引き もっとくわしくを参照)を取り上げていますが、大切なことは、何が一番重要な問題なのかと問わないことだといいます。未来にとって重要な問題はひとつではありません。それぞれの問題はたがいに関連しています。例えば、化石燃料をエネルギーとして使い続ければ温室効果ガスをはいしゅつし、気候変動をそくしんさせます。ほとんどの問題が解決されてもひとつでも問題が残っている限りは、私たちはぜんきゅうに立たされたままなのだから、全ての環境問題を解決するしかないとダイアモンドさんは強調します。
私たちにすぐできることとして、ダイアモンドさんは選挙で投票することをあげています。環境問題の解決に熱心に取り組む議員や政党を支持することが、環境問題の解決を前に進める一番の近道だからです。

ダイアモンドさんの興味はきることがありません。いくらでもいてくるのだそうです。82さいの今も元気に活動していて、2019年5月には、最新の著書『危機と人類』を出版し、国家の危機と個人の危機を対比させながら、危機に直面している人類がどう生きるべきかを示しています。そして、今も鳥の研究を続け、大学で教え、ピアノを練習し、外国語を勉強しています。

自宅近くでバードウォッチング

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しんちょうに、しかし楽観的に

ダイアモンドさんは、慎重派でもあります。ニューギニアの大自然の中では危険ととなり合わせで、ケガや病気をしてもすぐに病院に行けないので命取りになることがあります。ニューギニアで何度もこわい思いをした経験と、ニューギニアの人々の注意深さに学んだことで、ダイアモンドさんは危険を予測して行動する大切さを知りました。未来に対しても慎重ではありますが、悲観はしていません。人類は歴史上、様々な失敗をしてきましたが、成しげたこともたくさんあることをよく知っていますし、ダイアモンドさん自身も研究者としての行きまりをこくふくした経験があるからです。そして、人間の起こした問題は必ず人間が解決できると信じています。

未来に生きる若者たちには慎重でありながらも、楽観的に考え、未来に希望を持って生きてほしいというのがダイアモンドさんの願いです。

受賞者記念講演会
総合監修
安井至(国際連合大学元副学長/東京大学名誉教授)監修のことば
コンテンツ監修
荒井眞一(地域循環共生社会連携協会審議役)
※所属は公開当時のもの

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ジャレド・ダイアモンド教授

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