例えば、アンコール遺跡で有名なクメール帝国はかつて東南アジア最強の帝国でした。クメール帝国の中央部には東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖があり、この湖は雨期になると氾濫して大きく広がり、稲作に理想的な環境を作り出してくれます。また、生態系が豊かで魚もたくさん捕れます。このように水に恵まれた地域でしたが、この地域はモンスーン気候のため季節や年によって降雨量が大きく変わり、治水が難しいという問題も抱えていました。クメール帝国では貯水池を築いて水路を張り巡らし、複雑な治水のしくみを作り上げていたものの、気候の変動によって想定以上の洪水や干ばつに見舞われるようになり、そのしくみが維持できなくなってしまいました。森林破壊によって土壌が弱っていたことも、水をコントロールできなくなった一因です。これらの問題にクメール帝国の人々がうまく対応できなかったために、やがて帝国は衰退し、ついには滅亡してしまいました。
いっぽう、日本でも江戸時代の初期、森林破壊の問題に直面していました。この時期、人口が急激に増えたため建築用の木材や燃料用の薪などが大量に必要となり、森林が乱伐されたのです。鎖国をしていたので木材を輸入で賄うこともできません。