彼女が大学院生だったある日、一年間の滞在予定でスタンフォード大学にやってきたのが、有名な経済学者のパーサ・ダスグプタ教授でした。ダスグプタ教授は、「豊かさ」というものを考える時に、それまでの経済学では無視されがちだった「自然」がとても大切だと考え、自然を含めた国の豊かさをはかれるような新しい指標を作り出そうとしていました。この人に引き合わせてくれたのは、恩師のエーリック教授です。そのダスグプタ教授はさらに、20世紀最大の経済学者の1人で環境分野にも貢献したケネス・アロー教授を紹介してくれました。
彼らと親しく話すことで、デイリー教授は「生態学と経済学は、きっと手を携えていける。」と確信したのです。
1990年代半ば。当時、アメリカでは環境保護が下火になりつつありました。「余裕さえあれば環境保護もいいかもしれない。でもそんなことは一文の得にもならないじゃないか。」
デイリー教授は、これはゆゆしきことだと思いました。こういう考えの人たちにも、なぜ自然を守らなければならないかを納得してもらうため、自分たち生物学者がきちんと説明しなければ!

持続可能な発展を評価するため、国の豊かさをはかる新しい基準「包括的な富の指標」を提示しました。2015年ブループラネット賞受賞。