学習の手引き

ボルナー教授のものがたりはいかがでしたか?
ここは、みなさんがものがたりについて復習したり、理解を深めたりするためのページです。ここだけに書いてあることもありますよ!

<対象:小学校高学年以上>


こたえ

問1:次のうち、動物保護に役立つ行動はどれでしょうか。

こたえ:
1. 動物保護を行っている団体に寄付する。
2. 歯みがきのときに水を出しっぱなしにしない。
3. 見ていないのにテレビをつけっぱなしにしない。

全部正解です。

動物保護を行うためには資金が必要です。保護を行っている団体も寄付などがあれば、よりじゅうじつした保護活動が行えます。
歯磨きのときに使う水はどうでしょうか? 動物保護に関係なく思えます。ところが、考えてみてください。みなさんが使う水道水はどこから来るでしょうか? 多くの人に確実に水を届けるために、川や湖の水を取水したり、じょうすいじょうをつくったりしなければならず、これらは動植物のすみかをうばうことにつながるかもしれません。

テレビのつけっぱなしはどうでしょうか? 電気をに使うと、そのために二酸化炭素がはいしゅつされ、地球温暖化が進行します。すると、動植物が生息している地域の気候が変化してえさや水が採れなくなったりするなど、えいきょうまぬがれません。
一見、野生動物の保護に関係ないと思えることでも、地球のどこかでつながっているんですね。

問2:野生動物の保護を進めるために、最も重要なことはどれでしょうか。

こたえ:2. その地域で生活している人々にも協力してもらう。

野生動物の保護を考えるときには、関係する様々な要因を同時に考える必要があります。例えば、その地で動物をしゅりょうしてしょくりょうにしている人たちがいたとすると、その人たちに「動物をってはいけない」というと、生活がなりたたなくなります。また、これらの人たちは、自分たちの食糧がなくならないように、通常は必要以上の数の動物を獲ることはありませんので、大きな問題にはなりません。
野生動物の必要以上のかくや、生息地域のかいなどにつながる様々な要因を、その根本的な原因から取り除くこと、また関係者が協力して保護活動を進めることが重要です。 では考えてみましょう。

1番の野生動物の密猟で最も問題なのは、その背後に、密猟した動物のきばや角、皮などを高額で取引する商人や、密猟されたと知りながら高額で買取る人がいることです。密猟者も悪事を働いていることはちがいありませんが、密猟者だけを罰するのではなく、密猟した動物の売買に関係する人全てを取りまることが必要です。

3番の生物学の専門家が考える保護計画は、野生動物の保護を考える上でとても重要です。でも、前に書いたとおり、昔からその地域で生活していた人のことや、その国の人々が豊かに暮らすための、例えば高速道路の建設や住宅地の開発などとのバランスも考えないと、保護計画は多くの人からの賛同を得られません。

もうおわかりだと思います。その地域で生活している人は、そこに生息する野生動物に日々接していますので、動物の異変にいち早く気づいたり、密猟者に対するかん役になったり、観光客をむかえ入れてその地域のことを説明してくれたりと、様々なかたちで協力が得られます。さらに、これらの協力に適正な対価をはらうことで、その人達の生活も安定して、さらに充実した協力が得られるようになります。


ここはおさえておこう

ボルナー教授は、タンザニアのセレンゲティ国立公園における長年の動物保護活動を通じて「自然保護に大切なのは、人間をはいじょするのではなく協働すること」だと学んだそうです。

「人間」も生態系の一部であり、野生生物を守るには、その地や周辺に住む人たちの生活を尊重するとともに、それらの人たちと協力し合うことが重要。

多くの人は「豊かに暮らしたい」と願っており、それは「経済的な発展」を望むことにつながり、結果として自然をかいすることにつながってしまうが、だからといって経済的な発展を否定すると、多くの人から生物の保護のための協力が得られないので、「経済な発展」と「自然保護」を両立させる必要がある。


もっとくわしく

近年は、アフリカの自然保護区の数が増え、保護プログラムもじゅうじつしてきており、テレビ番組で取り上げられる機会も多くなってきました。保護活動が充実する一方で、課題をかかえている保護区もあります。
そこで、セレンゲティ以外で、いっぱんの旅行者でも野生生物の観察に訪れることができる自然保護区をいくつかごしょうかいします。

アフリカの自然保護区

タンザニア

ンゴロンゴロ保全地域

セレンゲティ国立公園の南東にりんせつしています。9つの火山があり、これらの活動により、クレーターときょだいなカルデラがあります。このカルデラ内部は外部としゃだんされており、カルデラ内に生息する大型動物のほとんどはカルデラの外にでることはないため、周囲とかくされた生態系が形成されています。
キリンやインパラ以外の東アフリカのサバンナに生息する動物のほとんどを観察することができます。

ケニア

マサイ・マラ国立保護区

ケニア南西部に位置しています。国境がない野生動物は、国境をはさんで南に広がるセレンゲティ国立公園の北部地域と一つの生態系を形成しています。
両方の公園をヌーとシマウマが季節移動することで有名です。特に、毎年7月〜10月にかけて見られるヌーの大移動は、およそ150万頭にもなるヌーの集団が新しい草を求めいっせいに移動する圧巻の光景が見られます。
この公園は、国が直接管理する国立公園ではなく、地方自治体が管理する「国立保護区」です。
肉食じゅう・草食獣ともに、生息する種類数・個体数が豊富で、多くの観光客が訪れ、ケニアに大きな観光収入をもたらしています。
近年、周辺部の人口増加により農耕地・ちく放牧地のじゅようが拡大し、周辺住民と野生動物の共存のあり方が問題になっています。

アンボセリ国立公園

キリマンジャロのすそにひろがる国立公園で、ゆうだいなキリマンジャロの姿をながめることができます。ヘミングウェイが小説「キリマンジャロの雪」をしっぴつした場所としても有名です。
もともとは、キリマンジャロのふんで出来たアンボセリ湖の大部分が干上がってできあがった平地でアンボセリ湖は雨季のみ現れます。またところどころに水がき出て、湿しっがあることで、そこに動物が集まり、観察がしやすくなっています。
また、ばく化の進行がてきされるとともに、2010年2月には、干ばつのえいきょうにより多くの草食動物が死亡したともいわれ、生態系に深刻な影響が生じています。

ボツワナ

チョベ国立公園

ボツワナほくたん部に位置し、同国初の国立公園です。ザンビア、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、アンゴラの5つの国にまたがっています。
この公園は、最北東部のチョベ川沿いに広がる青々とした草原とうっそうとした森林から、西部の湿地、北西部の湿しつげん、中間に位置する暑くてかんそうした内陸地という全く異なる4つの生態系に分かれています。
この公園は、アフリカゾウの生息数が多く、現在でも50,000頭が生息しており、アフリカ大陸でも最も生息密度が高くなっています。1970年代から1980年代にかけて大量のみつりょうが横行し、1990年には数千頭まで減少しましたが、保護活動を行った結果、その後は確実にその数を増やしています。
また、野鳥も多く、450もの種が生息しているといわれています。

南アフリカ

クルーガー国立公園

南アフリカ共和国の北東部に位置し、北側はジンバブエのゴナレゾウ国立公園、東側はモザンビークのリンポポ国立公園と隣接し、南北360キロメートル (220マイル)、東西65キロメートル (40マイル)のアフリカ有数の規模のちょうじゅう保護区です。
そこに約150種のにゅう動物、500種の鳥類、120種のちゅうるい、30種の両生類、50種の魚類、460種の樹木、1500種の植物が暮らしているといわれています。
アフリカゾウの保護を進めた結果、同公園での生息可能数をた数が生息するようになり、個体数の管理にりょしています。
また、ビッグ5(巨大5種)といわれるヒョウ、バッファロー、ライオン、ゾウ、サイの5種類全てが観察できる可能性が高いことから、観光客の人気を集めています。

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マルクス・ボルナー教授

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