その際、「ある状態」までは、牧草地から全ての牛を連れ出せば、牧草地はまた再生します。植物は地下の根で水や栄養分を吸収して成長するため、ある程度までは土の表面に出ている茎や葉が食べられてもまた生えてきます。レジリエンスとは、何か変化が起きても柔軟に対応できる能力のことだと最初にご説明しましたが、例えばこの例では、牧草地が再生するうちはレジリエンスが保たれている状態だといえます。
しかし、放牧を続けて牧草の量が「ある状態」より減ってしまうと、その後に牛を連れ出しても牧草地はもう元の状態には戻りません。そして最終的には、もともと草が生えていた土地が砂漠化し、まったく草が生えない不毛の大地になってしまうのです。このようなことが、実際にサハラ以南のアフリカの多くの場所で起こっています。