指導者のかたへ

「ブループラネット賞ものがたり」は、環境学習にも広くご利用いただきたいという思いから、ひとつの「ものがたり」に対して「学習の手引き」「参考情報」そしてこの「指導者のかたへ」という、三つの「環境学習補助コンテンツ」を用意しています。
このページでは、指導者のかたが教材として利用することを想定し、指導の助けになるような情報を掲載しています。
学校での環境学習の授業や、お子さまの自主学習などに、ぜひお役立てください。

<対象:学校の先生、保護者など、教育指導にあたるかた>


指導に向けたものがたりの再確認

ファルケンマーク教授は、アフリカの貧困と飢餓に水不足が深く関係していることにいち早く気づきました。そして、世界の水不足の状況を示す「ファルケンマーク指標」を作成し、乾燥地域における食料生産に重要な土壌中の水分「グリーンウォーター」を提唱するなど、長年の研究を通して水問題の解決に大きく貢献してきました。
子どもたちに学習の機会を提供するにあたって、まずは自分たちが普段は無意識に使っている水についていつもとは違う視点から理解を深めたうえで、世界各地での水問題へと学習の幅を広げるとよいでしょう。


指導方法の例

指導に用いる適切な教材が見当たらない場合は、以下を参考にしてください。

水不足による農作物への影響を調べてみよう

【ねらい】
ファルケンマーク教授がアフリカの食料問題解決のカギとして推奨するグリーンウォーターは、地上に降った雨水のうち、土に浸透して植物に利用される水のことです。この概念を理解するのは最初は難しいかもしれませんが、グリーンウォーターに頼る農業でなくても、農業が降雨に大きな影響を受けることは理解しやすいと思います。例えば、灌漑農業で利用される河川水などのブルーウォーターも、降雨の影響を受けるのです。
このワーク課題では、農作物にとっての水、特に雨水の重要性を学び、グリーンウォーターの意義を理解する入口に立つことを目的とします。

1. 身近な農作物について調べてみよう

①それぞれ数人でチームに分かれて、自分たちの国で、近年、水不足が農作物に影響を及ぼした事例を選び、以下のような内容について調べ、わかったことを整理します。

  • いつ、どこで起こったか
  • 農作物は何か
  • どのような影響があったか
  • 何が原因だったか(水不足とそれ以外に分けて記述)
  • 農作物への影響により、どのようなことが起きたか

※できれば、「自分達にとってどのような影響があったか」まで掘り下げられるとよいでしょう。

(まとめ方の例)

いつ、どこで
○○年の秋、○○市
農作物
特産品である○○
被害の内容
夏、芽が出ないものが多く、収穫量が前年に比べ大きく減少した。
原因
(水不足)夏の降雨量がいつもより少なかった
(それ以外)夏の猛暑
被害による影響
○○の値段が高騰し、食卓にもあまり上がらなくなった。

これらに関する情報は、ニュースサイトや過去の新聞などでわかりますが、農家などで話を聞くことができれば、更に理解が深まります。

②話し合ってみる
整理した結果について質疑応答を行います。

<指導のポイント>

水不足と聞いて想像しやすいのは、例えば自分達が生活の中で普段使っている水が足りなくなることだと思います。いっぽう、水不足が食料不足に直結することは、特に子どもであれば、すぐには結びつかない場合もあるでしょう。
水不足はどの地域でも身近な問題であること、そしてそれによって、自分たちの食生活が容易に脅かされうることに思いを至らせるディスカッションになるよう心がけてください。

2. 身近でない農作物についても調べてみよう

①1.と同じチームで、今度は自分達の国「以外」を対象として、水不足が農作物に被害を及ぼした事例を選び、調べます。近年の事例でなくてもよいこととします。それ以外は1.①、②と同様に進めます。

②他のチームで調べた事例と比較して、思ったことを話し合いましょう。

意見交換の例

A国の事例とB国の事例は両方とも干ばつが農作物に被害を及ぼし、収穫量が減少した例だが、農作物の値段が一時的に高騰したA国の事例に比べ、食料不足が続き多くの人が飢餓に陥ったB国の事例はより深刻に思える。

  • どうしてB国の事例は深刻化してしまったのだろう。
    →いつもは雨が多いA国と比べて、B国はもともと雨があまり降らないし大きな川や湖もないので、水不足になりやすいのではないか。
    →水不足の原因はそれだけだろうか。他にも何かあるのではないか。
  • B国で農作物の収穫量を増やすにはどうすればいいのだろうか。
    →もともと雨が降らない乾燥地ではどのような農作物があるのだろうか。
    →どうすれば農作物が育つために十分な水を確保できるのだろうか。
<指導のポイント>

複数の国を比較してディスカッションすることで、世界の水問題の地域的な違いが見えてくることが予想されます。
ここから更に「では、自分はどうしたらよいと思うのか」という方向に議論を誘導し、多くの意見を導き出すことが望まれます。

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マリン・ファルケンマーク教授

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