4. 地球を救おう

ミレニアム開発目標

MDGsの8個の目標

MDGsの8個の目標

2000年、21世紀を目前にして、国連の「ミレニアム・サミット」にて、より安全で豊かな世界をつくるために国際社会が協力を約束する「ミレニアム宣言」がさいたくされ、世界から貧困をなくすための画期的な目標「ミレニアム開発目標(MDGs エム・ディー・ジーズ)」が設定されました。

MDGsの8個の目標

MDGsの8個の目標

これは、2015年までという期限を設け、世界のかかえる深刻な問題の解決に向けて具体的な8個の目標を設定し、みんなで達成をめざして取り組もうというものです。

MDGsの8個の目標

MDGsの8個の目標

特に第1の目標「極度の貧困とぼくめつ」達成の目安として、「極度な貧困状態におかれている人を半減させる」ことがあげられました。全世界の193の国、全国連加盟国がこの目標を達成することに同意したのです。

しかし、翌年2001年9月11日、サックス教授の母国・アメリカで同時多発テロが起きました。そして、アメリカは戦争に進んでいきます。国同士が協力して世界をよくするという道に、暗雲が立ちこめたのです。

サックス教授は、今こそ国際協力のために何かしたいと考え、アナン国連事務総長に手伝えることがないか聞きました。すると、アナン国連事務総長は、MDGsの達成をめざす国連の「ミレニアム・プロジェクト」を指揮してくれないかと言いました。サックス教授は、この目標がすばらしいものだと思っていたので、すぐに引き受け、さっそく計画を立て始めました。

また同時期、ニューヨークのコロンビア大学の地球研究所から所長にならないかという話がありました。地球研究所は「持続可能な発展」を可能にするために、さまざまな分野の専門家が集まり、力を合わせて気候やかんきょう保護、公衆衛生、経済開発などの問題に取り組むところです。

サックス教授は、こちらも引き受けました。もともと地球研究所は、ミレニアム・プロジェクトとも密接な関わりがありました。地球研究所が指揮をとったミレニアム・プロジェクトの活動の一つに、貧困状態におかれているアフリカの村に対して、効果が高くてそっこうせいのあるえんを行う「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト」があります。

こうしたなかで、サックス教授はこれまで以上に視野を広げ、私たち人間の経済活動が引き起こした地球温暖化や自然かんきょう悪化、人口のばくはつ的増加といった地球全体の問題に取り組むことが、他のさまざまな問題にとっても、きわめて重要だと思うようになりました。

たとえばこのまま地球温暖化がすすめば、グリーンランドや南極のひょうしょうが解け、海面がじょうしょうして低いところにある土地がしずんでしまったり、マラリアのような暑い地域のかんせんしょうが拡大したり、作物が育たなくなったり、自然災害が増えたりと、私たち人間をおびやかすさまざまなえいきょうが出るおそれがあります。いくら貧困をなくすためにがんばっても、地球温暖化が台無しにしてしまうかもしれないのです。

このような地球規模の問題を解決するには、人間が今までしてきたやりかたをしんけんに見直さなければならず、また世界中の国々が協力しなくては実現しません。サックス教授はそれを強くうったえ、MDGsの達成をめざして世界をリードしてきました。

また、長いこと「極度の貧困」をなくすために力をつくしてきたサックス教授ですが、最近は豊かな国とよばれてきた先進国の中にも貧富の格差、かんきょう悪化、教育のれっといった、深刻な問題が広がっていることを心配するようになりました。ついに、サックス教授の母国・アメリカもしんだんの対象になったのです。
そして、ひたすら物を欲しがって、手に入れるだけでは人間は幸せになれないと警告し、自分のことばかり考えず、おたがいへの思いやりを持って行動する「共感に満ちた社会」をめざすことが、よりよい未来につながると説いています。

ミレニアム開発目標(MDGs)から、持続可能な開発目標(SDGs)へ

2015年は、ミレニアム開発目標(MDGs)がゴールとしていた年です。とても難しいチャレンジと言われていたMDGsでしたが、大きな成果を挙げました。特に、第1の目標であった極度の貧困の半減は、目標を上回る成果が出たのです。

SDGs

そしてMDGsのこうけいプログラムとして、「持続可能な開発目標(SDGs エス・ディー・ジーズ)」が設定されました。これは、2015年から2030年までの目標で、開発じょう国だけでなく先進国もふくめた、地球全体の持続可能な発展をめざすものです。

SDGs

目標の数はMDGsが8個だったのがSDGsは17個と、2倍以上に増えましたが、ここでは第1の目標として「貧困をなくす」ことがかかげられています。サックス教授は、まず、世界中の人にSDGsのことを知ってほしい、そして、自分の問題として、いっしょにこの目標達成に向けて取り組んでほしいと言っています。
サックス教授は、いかに大変な問題でも、できないと思わず、しんけんに取り組めば必ずやりとげられるといいます。
さあ、あなたも、サックス教授といっしょに、チャレンジ!

総合監修
安井至(国際連合大学元副学長/東京大学名誉教授)監修のことば
コンテンツ監修
大沼あゆみ(慶應義塾大学経済学部教授)
山口臨太郎(京都大学経済学研究科共同研究講座特定准教授)
※所属は公開当時のもの

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ジェフリー・D・サックス教授

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