一般的には経済が成長すれば、人々はより豊かな暮らしができ、幸せになると思われていますが、実はそれによって失われるものもあるのです。例えば、デイリーさんはブラジルで、エネルギー産業が深刻な環境問題を引き起こしたり、森林が伐採されたり、農業でも問題が生じていることを見てきました。電気などのエネルギーも、木材も、農業で生み出される食料も、すべて人間が必要とするものです。だから人々は必要なものをもっと手に入れたいと思い、どんどん経済を拡大し、環境への負荷を大きくしていきました。このように経済成長は他のものを犠牲にする場合があるのです。
長年、経済と環境の関係を研究してきたデイリーさんは、経済が拡大し続けると、環境への負荷は地球の限界を超えてしまうと考えたのです。そして、経済成長ありきの考え方に警鐘を鳴らすべく、人口や人工の資本が一定の経済である定常経済に関する先人の優れた考えを収集して論文集を出版したり、経済学者と環境専門家の相互理解を深める目的で、国際エコロジー経済学会を創設したりするなど、様々な活動を行うようになりました。