2008年、ドイツのボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(CBD COP-9)で、シュクデフさんたちはそれまでのTEEBの研究でわかったことを中間報告として発表しました。この時の目的は、まず実際にどれくらいの自然が失われているのか、それが経済的にはどれだけの損失なのかをまとめることでした。シュクデフさんによれば、大都市に関してそれを調べたところ、毎年2〜5兆ドルもの損失だとわかったのだそうです。
2008年は、史上最大の世界的な金融危機(リーマンショック)に見舞われた年ですが、その時の銀行の損失額がちょうどそれと同じくらい。過去数十年間にわたり、毎年毎年、自然が失われることでそれほどの損失があったのです。このインパクトのある数字によって、それまでよくわかっていなかった人も、ようやく事の重大さに気づいたのです。
自然の価値は複雑で、全てお金であらわすのは限界もあります。それでも、お金というわかりやすい基準は、自然の価値や、これまでの損失を示すのには、このように有効にはたらくのです。