かんしゅうのことば

2015年のブループラネット賞の受賞理由が、二人とも貧困や富に関する功績が評価された、ということになりました。しかし、これは、決してぐうぜんということではなく、強い理由があると考えます。

2015年で24回を迎えたブループラネット賞のこれまでの受賞件数は年2件ですので、合計48件です。日本人受賞者は3名だけで、大多数は、海外でかつやくした人々や組織に対してじゅされました。かんきょう研究というと、世界で共通かと思われるかもしれませんが、日本の環境問題はかなりとくしゅであったというけいから、環境研究とは何かということでも、やや違った歴史を持つ国なのです。一言で言えば、日本の環境研究は公害に対処する必要性があったためか問題解決型であり、一方、海外の環境研究は、地球や生態系のメカニズム研究や環境保全に重点があったのです。もちろん、海外の研究が、じゅんすいに理学的な見地から行われていたということではなく、人間活動は、かんきょうにストレスをあたえる原因として、認識されていました。

ブループラネット賞が、「環境保全と経済成長」という課題に対して授与されたのは、2004年のブルントラント博士が最初ですが、経済成長を目指す人間活動が環境にあたえる負のえいきょうは大きいのです。それ以後、経済学者の受賞者が少しづつ増えていきました。2009年のスターンきょうざわひろふみ教授、2014年のデイリー教授と続き、今回のサックス教授、ダスグプタ教授の受賞になりました。


ぎょうによる経済活動が環境をかいする問題は、少なくとも先進国においては、ほぼ解決されました。しかし、じょう国の貧困を解消しなければ、デイリー教授の言う定常状態を守ることはできず、環境は破壊に向かうのです。環境とは、やや高度な知的活動の対象、言い換えれば、ある程度豊かになって始めてはいりょできる対象に分類されるからなのでしょう。こう考えると、貧困の問題は、単に、ある国だけの問題ではありません。世界全体で解決すべき問題なのです。


ところが、最近の世界全体の動向は、と言えば、例えば、難民の増加、経済格差の増大といったじょうきょうにあり、貧困も当然ながら増加するけいこうにあります。これは、環境保護にとっても、良い方向ではないことは明らかなのです。

こんな背景があって、2015年には、二名とも貧困に関する受賞を受けたということになったのだと思われます。


このことをふまえ、このたび新設する、ブループラネット賞の意義についてわかりやすく伝えるウェブサイトで二名の受賞者の功績を伝えることは、世界の人々が貧困についてどのように向き合う必要があるのか考えるよい機会になると思います。


やす いたる Itaru Yasui
国際連合大学元副学長
東京大学めい教授