学習の手引き

サックス教授のものがたりはいかがでしたか?
ここは、みなさんがものがたりについて復習したり、理解を深めたりするためのページです。ここだけに書いてあることもありますよ!

<対象:小学校高学年以上>


まずはクイズです!

問1:サックス教授は、たとえばある国で貧困が問題になっていたら、解決するためにどうすればよいと思っているでしょう。

1.どの国でも問題が同じなら、同じ方法で解決する。

2.その国のじょうきょうに応じて、いちばんよい解決方法をみつける。

3.その国に実際に行くと冷静に問題がみられなくなるので、問題解決の役には立たない。


こたえ

問1:サックス教授は、たとえばある国で貧困が問題になっていたら、解決するためにどうすればよいと思っているでしょう?

こたえ:2.その国のじょうきょうに応じて、いちばんよい解決方法をみつける。

<サックス教授の考える、国の問題の解決方法>
サックス教授は、問題の原因はその国によってまったくちがうので、国それぞれの事情を考えずに画一的な対策を考えるような方法ではうまくいかないと考えています。また、その国に実際に行って状況をあくすること、加えてその国の人たちの考え方に、よりそうことが大切だと考えています。サックス教授が問題解決の信条としている「りんしょう経済学」は、そのような考え方によるものです。

問2:貧困の理由としてサックス教授が考えているものに、あてはまらないのはどれでしょう。

こたえ:2.貧しい国に住む人々は生まれつき、豊かになるための能力がない。

<サックス教授の考える、貧困の理由>
サックス教授は、国が豊かになれたかどうかには、「条件」にめぐまれていたかどうかが大きく関係していると考えています。(もし豊かな国の人が、自分たちが生まれつき優れていて、自分たちの力だけで豊かになったように思っているのなら、それはまちがっているというのがサックス教授の意見です。)また、貧しい国がその貧しさのために、豊かになるのをはばまれていることもてきしています。


ここはおさえておこう

経済学者のジェフリー・サックス教授は、世界の貧困のぼくめつ、そして持続可能な社会の達成のため、具体的な策を考え、また、世界に向けて信念をもって発言し続けてきました。サックス教授のエネルギッシュな活動から、私たちはこんなことを学ぶことができます。

問題を解決するときは、じょうきょうをよくあくして、何がその問題の原因となっているのかを見極めたうえで、適切な解決策をたてることが、大きな効果につながる。

貧しい国が貧しさからぬけだすことや、持続可能な社会の達成は、世界中の国が協力して取り組むべき課題である。そのためには、私たち一人ひとりがまわりのこと、そして世界のことを思いやる視点を持ち、行動することが大切である。


もっとくわしく

りんしょう経済学の「個別しんだんチェックリスト」

お医者さんがかんじゃさんを診断するときには「もんしん票」を使います。あなたも見たことがあるかもしれませんが、問診票には「いつからしょうじょうが出ましたか?」「どこが痛みますか?」「薬は飲んでいますか?」というように、患者さんの症状を正しく診断するために必要な質問が、適切な順番で並んでいます。
サックス教授も同じように、国を診断するための問診票「個別診断チェックリスト」を作っています。サックス教授は、こういったことを聞いたり調べたりして国のじょうきょうを正しくあくし、その国のために一番よい解決策を考えるのです。

サックス教授の個別診断チェックリスト(概要)※

左にスワイプして表の全てを見る

グループ
1.貧困のわな 極度の貧困はどこにあるのか。何割くらいの世帯か、どの地域に多いのか、貧困を悪化させる要因としてどんなことがあるのか。
2.経済政策のわく ビジネスをしやすいかんきょうが整っているか、他国に市場が開かれているか
3.財政の枠組みと財政のわな 国の予算は適切に使われているか
4.物理的な地理的条件 輸送のためのこうわんや道路の利用状況はどうか、自然環境が農業や人間におよぼすえいきょうはどうか
5.ガバナンスの形態と失策 政府がきちんとした政治をしているか
6.文化的しょうへき 性別、人種、宗教などの点で社会は平等か
7.地政学 他の国との関係はどうか

※サックス教授の著書「貧困のしゅうえん」にけいさいされている個別診断チェックリストの内容を要約したものです。

ミレニアム開発目標(MDGs)と持続可能な開発目標(SDGs)

MDGs(エム・ディー・ジーズ)と、そのこうけいプログラムであるSDGs(エス・ディー・ジーズ)について、もう少しくわしくごしょうかいします。

MDGsは、国連の「ミレニアム・サミット」でさいたくされた「ミレニアム宣言」と、1990年代に複数の国際会議でかかげられた国際開発目標をまとめたものです。主に開発じょう国の問題を解決することを目指し、貧困のぼくめつなど、具体的な8個の目標が設定されました。

ミレニアム開発目標(MDGs)
目標 主なターゲット(目標を達成したと考える目安)
目標1
極度の貧困との撲滅
1日1.25ドル未満で生活する人口の割合を半減させる
飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる
目標2
初等教育の完全きゅうの達成
すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程をしゅうりょうできるようにする
目標3
ジェンダー平等推進と女性の地位向上
すべての教育レベルにおける男女格差を解消する
目標4
乳幼児死亡率のさくげん
5さい未満児の死亡率を3分の1に削減する
目標5
にんさんの健康の改善
妊産婦の死亡率を4分の1に削減する
目標6
HIV/エイズ、マラリア、その他のしっぺいまんえんの防止
HIV/エイズの蔓延を阻止し、その後減少させる
目標7
かんきょうの持続可能性確保
安全な飲料水と衛生せつを利用できない人口の割合を半減させる
目標8
開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
民間部門と協力し、情報・通信分野の新技術による利益が得られるようにする

MDGsは達成期限をむかえた2015年、一定の成果をあげました。
さらに知りたいかたへ(参考情報):MDGsの成果報告
しかし、まだ全ての問題が片づいたわけではありません。「だれ一人取り残さない」を合言葉に、後継プログラム「持続可能な開発目標(SDGs)」がスタートしました。

SDGsは持続可能な発展のため、社会やかんきょうをよりよくしていくための、17個の目標を設定したものです。17個の目標には、それぞれ具体的なターゲット(目標を達成したと考える目安)があります。たとえば、「目標1:貧困をなくす」には、「2030年までに、現在1日1.25ドル未満※で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」というように、いくつかのターゲットが設定されています。全てのターゲットの合計は、169個にもなります。
さらに知りたいかたへ(参考情報):持続可能な開発のための2030アジェンダ
 (SDGsの全文、17個の目標と169個のターゲットがけいさいされています。)
 ※2015年10月から、「1日1.90ドル未満」にへんこうされました。

SDGsという大きな目標を達成するためには、世界のすべての国が主体的に行動することが求められています。それぞれの国は、自分の国は何ができるか、何を優先して解決したいかなどに応じて、もっとも重要なターゲットを選び、独自の方法を工夫して達成をめざすことになっています。あなただったら、どんなターゲットを選んで、どうやって達成をめざすでしょうか。
サックス教授は世界のみんなにいっしょに取り組んでもらうため、まずは17の目標、全部を覚えてほしいと言っています。ちょっと大変ですが、ぜひやってみてください。

持続可能な開発目標(SDGs)
目標
目標1
貧困をなくす
目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困にしゅうを打つ
目標2
をなくす
目標2 飢餓にしゅうを打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
目標3
健康とふく
目標3 あらゆるねんれいのすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
目標4
質の高い教育
目標4 すべての人にほうせつてきかつ公平で質の高い教育を提供し、しょうがい学習の機会をそくしんする
目標5
ジェンダー平等
目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
※エンパワーメント…力を発揮できるようになること
目標6
きれいな水と衛生
目標6 すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
目標7
だれもが使えるクリーンエネルギー
目標7 すべての人に手ごろでしんらいでき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8
人間らしい仕事と経済成長
目標8 すべての人のための持続的、包括的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全ようおよびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
目標9
産業、技術革新、社会ばん
目標9 きょうじんなインフラを整備し、ほうせつてきで持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
目標10
格差のせい
目標10 国内および国家間の格差を是正する
目標11
持続可能な都市とコミュニティづくり
目標11 都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
目標12
責任ある生産と消費
目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標13
気候変動へのきんきゅう対応
目標13 気候変動とそのえいきょうに立ち向かうため、緊急対策を取る
目標14
海洋資源の保全
目標14 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
目標15
陸上資源の保全
目標15 陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、ばく化への対処、土地れっおよび逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標16
平和、法の正義、有効な制度
目標16 持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
目標17
目標達成に向けたパートナーシップ
目標17 持続可能な開発に向けてじっ手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

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ジェフリー・D・サックス教授

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